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幼児教室 子育て支援


by child-popup

クラスのたからもの 1

今日は幼稚園時代の思い出深いお話をします。

私は学生時代から障害児教育にも関心があり、少し勉強していたこともあって 軽い障害を持つ子ども達を何人か受け持ったことがあります。
ある年、発達遅滞の男の子が年中組で入園してきました。
しかし 軽度の障害があるとわかったのは、入園してきてからでした。

まず喋らない、動かない、反応がない、感情を出さない、自分から行動しないことが多い といった具合で誰か付き添わないと何も出来ないという状態でした。
対応するにあたって 詳しいことを聞こうと思い、お母様に話を伺おうとしたら お母様がおどおどしてしまって深い話が出来ません。
どうやらお母様の方も 今で言う“コミュニケーション障害”のようでした。
短い簡単なやりとりなら なんとか出来たので、彼の家庭での様子を伺いました。
返ってきた答えは「わかりません」
子どもが5人いるので、ひとりひとりのことは よくわからない というのです。
それ以後 何を聞いても「わかりません」でした。

親御さんからの情報がない以上、本人の様子を見て対応するしかありません。
登園すると 正門から玄関までの間で座り込んでいます。
私が迎えに行って玄関まで連れてくるのですが、自分の上靴がどこにあるのか覚えられません。
彼の上靴を出してきて 目の前に置きますが、これも自分で はきかえられません。
なんとか保育室まで連れて入り、他の子ども達の相手をしていると 部屋の片隅で一人 ボーッとしています。
他の先生が迎えに行っても動かないので、毎日彼の側について身の回りの始末を教えました。
迎えに出るのも 最初は門の所まで、慣れてきたら玄関まで、廊下まで…とするつもりが いつも玄関の所でうずくまっています。

つきっきりの状態が1か月も続いた頃、その日は朝からバタバタしていて 登園してきた子に「先生、○○くんが玄関の所で待ってたよ。」と言われました。
「わかった。教えてくれてありがとう。」と言ったものの手が離せません。
私の様子を見かねた子どもが「ボク、迎えに行ったるわ。」と言ってくれました。
しばらくすると戻ってきて「アカン。ちっとも動かへん。」
すると他の子が「みんなで行ったらお部屋まで来れるかな。」と言い出し、数人で迎えに行きました。

なかなか戻ってこないので やはり無理だったかと思っていたら、
クラスの半数の子ども達が彼を取り囲み 嬉しそうに保育室に入ってきました。
聞くと なかなか上靴にはきかえないので、子ども達がはきかえさせ、みんなで手を引いて連れてきた と言うのです。
いつも私がしていたことを見ていたのでしょうが、4歳の子ども達がそこまで出来たことに感動しました。
自分達と同じように出来ない子を 友達として受け入れた子ども達の顔はキラキラ輝いていました。

このことがきっかけで クラスの子ども達がどんどん成長することになるのですが、続きはまたの機会に…。
by child-popup | 2011-04-28 14:06 | 思い出のアルバム | Comments(0)